投稿原稿
JA 組合員が抱える課題と総会(仮題)
秋田県大潟村・今野茂樹
6月は農協の総会シーズンである。私が所属する農協でも、同月下旬に総会が開かれた。私の農協の正組合員数は1104人だが、本人出席は59人、出席率はわずか5・3%だった。毎年のことながら、極めて少ない。それでも総会が流会にならないのは、組合員から集めた委任状と書面議決書のおかげである。
他の農協も、日当を支払うなどしてようやく出席者を確保しているのが実情のようである。これで総会が成立し議案が通るのは、不自然だと思う。
どうして組合員が総会や総代会に関心を持って出席し、議論しようとしないのか、自分なりに考えてみた。
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出席率が低い要因として思い浮かぶのは、組合員が関心を持てる議案が少ないことである。農協の総会であるならば、組合員の経営や課題に関する議案が一番目にあるべきだと考える。だが、実際には、「農協経営」に関する議案だけを提出している農協がほとんどだ。
組合員が「農協経営の成果」をいくら聞かされても、農家所得とは必ずしも結び付かないため、関心は低い。質疑もおのずと農協経営に関することが中心となり、組合員が抱えている課題は脇に置かれた状態だ。
農協の総会議案は農協法で定められていると聞いて、農協法の規定そのものに問題があるのではないかと考え、農水省協同組織課に確かめてみた。同課の説明は、次のような分かりやすいものだった。
「農協法では総会の決議を経なければならない事項を定めている。これは、総会で最低限審議しなければならない内容である。だが、農協は自治組織なので、どういう事業を行うかや、総会で組合員とどのような議論をするかは農協が自ら考える必要がある」。
農協は自治組織として、組合員のために何をなすべきかを考え、総会に諮り、計画に沿った事業を行い、1年後に検証・報告する。それが基本ではないだろうか。しかし残念ながら、組合員のためになすべきことを十分に考えているようには見えない。
JAグループは一昨年の全国大会や各県の大会で、自己改革の重点目標として、①農業者の所得増大②農業生産の拡大③地域の活性化―を基本目標として決議し、「このうち、①②を自己改革の最重点課題として、すべての農協で取り組みます」と謳っている。ところが、各農協の総会議案には、これらに沿った事業計画や予算案は盛り込まれていない。
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仮に「農業者の所得増大」に関する議案が提出されていれば、組合員は総会に関心を持って出席するだろう。活発な意見が交わされ、組合員が抱えている課題が浮き彫りになり、解決策が模索されるに違いない。だが現状は、そうした総会とは程遠いと言わざるを得ない。
「一年の計は総会にあり」とも言えるだろう。自己改革の重点目標を「努力目標」に終わらせないためにも、「組合員ファースト」の総会議案を提出し、議論する必要がある。 (投稿)