公正取引委員会 第一審査課 御中

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JA全農及びJAにおける「非主食用米の共同計算」による代金精算方式についての申告

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 全国農業協同組合連合会(JA全農)の一部の県本部やJA(具体的な県本部名等は明かされていない)が、組合員との間で出荷契約を結ぶ際、加工用米や飼料用米・輸出用米等の非主食用米を、「どの品目を作付けても同一水準の手取りとなるよう調整」(全農)していることを知った。非主食用米は用途や品種・価格・流通ルートなどが全く異なる米穀であり、JAグループはこれらを独自に「水田活用米穀」と呼んで、共同計算方式(プール計算)による価格調整を行っている。

 全く異なる非主食用米同士をプール計算することは、居酒屋で見知らぬ客同士を割り勘させるようなものであり、JAが集荷段階で代金の手取り額を意図的に調整することは、生産者にとって選択の余地をなくし、市場原理が働かず、公正な取引を妨げるのではないか。

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 共同計算は、同じ米でも販売月によって価格が変動するので、年間を通してプール計算することによって公平性を確保する、というのが本来のあり方である。つまり、品種などが同じグループ単位で計算するのが基本である。

 実際、全農秋田県本部のように、うるち・酒・モチ・備蓄米・加工用米に分けて共計し、飼料用米と輸出用米は買取する(共同計算していない)県本部も存在する。

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 この問題は、単に公正な取引かどうかだけでなく、生産者にとって、価格がやや高めの飼料用米・加工用米等の代金が安い輸出米代金に充てられることになり、結果として非主食用米全体の販売代金が薄まり、輸出を伸ばすほど農家所得を減らすこととなる。

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 このため、私は、本年2月17日、全農輸出推進課及び全農秋田県本部米穀部、JA秋田中央会経営企画課に対し、輸出用米の代金精算方式に関する問題点を記した新聞投稿原稿を送付し見解を求めた。

 2月21、23日と3月2日に全農輸出推進課 野末知裕課長よりメールで返信があり(資料1)、3月28日にはJA秋田中央会担い手対策室 梅川室長より平成25年4月発出「備蓄米・加工用米等の手取り平準化に向けた取組について」と題した書類のFAX送付があった(資料3)。

注)なお資料2は、県本部が組合員と出荷契約を結ぶ際に精算額を調整することを周知するため平成28年度に配布したチラシであるが、内容の引用や無断転載等を控えるようにとされており添付できない。

 資料3の別紙3「出荷契約の約定事項例」には、組合員に制度別等間で精算額の調整を行うことを承諾させる文例が明記されている。輸出推進課の回答などからも、こうした出荷契約を結んでいる県本部・JAが複数あると考えるのが自然だろう。

 また、これら回答は、全農県本部やJAがチラシ等で「手取りを平準化する」ことを周知した上で出荷契約を結んでいるとしており、そうした事実があることは確かだが、県本部名を黒塗りしたチラシを当方に示すなど、具体的な本部名やJA名は明かしていない。

 回答では「主食用米の需要が減少するなかでも、農家組合員が安心して水田農業を継続できるように」「個人間の公平性を確保するため」「どの品目を作付けても同一水準の手取りとなるよう」などと説明しているが、組合員には説明していない大事なことがあった。それは、2月23日の野末課長の回答に、

「輸出米の価格は国内に比べ安いことから、短期的にみれば、JAグループ・生産者にとって必ずしも有利な面ばかりとは言い難いかもしれませんが、以上のような中長期的視点・目的で、その必要性を生産者に理解していただきながら取組みをすすめています」

とあるように、「平準化」が生産者にとって不利益になる場合があることを伏せている点である。全農やJAは組合員に対して最も重要な内容を分かりやすいように説明していないのである。

 一方、JAグループにとって、販売手数料を定額制で徴収している場合、安い輸出用米であっても一定の手数料収入が見込まれるため不利益になるとは考え難い。おそらく、平準化を行っているJAは手数料を定率制ではなく定額制で徴収しているJAではないかと推察する。(手数料を定額制で徴収するJAは全国で48.5%)

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 なお、私自身は主食用米と加工用米を栽培し、それぞれ分けて販売しているが、全国で約9000トンある輸出用米が今後、国の方針で増えることが想定される。そうした中、こうした米取引が増えれば、悪影響が当方にも及ぶことが危惧される。また、組合員に奉仕するJAのあり方にも疑念がある。

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以上