森ゆうこ さま

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以下は、農産物検査法の問題点について、先日、農水省記者クラブで会見した際の発表原稿と資料です。

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農政クラブ説明会(2017年9月8日)

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 私は、生き物共生農業を進める会の今野と申します。当会は、かつて日本第二の湖だった八郎潟を干拓して造られた、秋田県大潟村で環境保全型農業を行っているグループです。そしてこちらは、ダイオキシン・環境ホルモン国民会議の水野さん、グリーンピース・ジャパンの関根さんです。

 本日は、農産物検査法が過剰な農薬使用を誘発しており、十数年前から見直しを求める活動を続けてきましたが、見直しが進む様子が一向に見られないため、この問題を消費者や国民の皆さんに知ってもらおうと、こうして参った次第です。

本日は宜しくお願いします。

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 はじめに、こういう活動をすることになった切っ掛けですが、2002年に、当会などが加盟する「大潟村環境創造21」という市民グループが行った集会で、参加した農家が「コメの検査で農薬を使わないといけなくて困っている」との発言があり、検査基準が過剰な農薬使用に繫がっていることを知りました。環境創造21では、現行の検査規格には問題点が多いとの認識を持ち、以来、検査制度の見直しを求める活動を活動テーマの1つにしていましたが、その後活動を停止してしまったため、当会が引き継いで活動しているところです。

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 さて、現行の農産物検査法についてですが、戦後のまだ食糧難時代だった昭和26年に制定され、これまで大きな見直しがほとんどありませんでした。

 資料の一枚目をご覧ください。これは現行のコメの検査基準ですが、制定当時5等級あったのが3等級になったというような細かな改正くらいで、検査員が目視で検査するという前近代的な検査手法は変わっていませんし、安全に関わる検査項目は「異物」のみです。

というのは、制定当時は食糧難でしたから、測定機器がなく、主食であるコメを国民にいかに安定的に配給するか、というところに検査の主眼が置かれていたためです。

 それがコメ余りの時代に移り、より美味しく安全なコメが求められるようになっても、検査制度は食糧難時代のままです。

 目視の検査で食の安全や客観的な評価が担保できるのかという問題がありますが、特に問題があると考えているのは、資料にある網掛けをした0.1%という部分です。これは、1等米の着色粒と呼ばれる米粒の混入限度が0.1%であることを示しています。

 着色粒とは、次のページに写真を載せていますが、ほとんどが「斑点米カメムシ類」と呼ばれるムシが原因でできる茶褐色の斑点がついた米粒のことをいいます。

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 一枚目の資料に戻って頂いて、着色粒の右、「異物」のところをご覧ください。0.2%と着色粒よりも2倍多く許容されています。被害粒全体の最高限度が15%ですから、着色粒の基準値がいかに低く設定されているかがお分かりだと思います。

 生産者は、この基準値をクリアするために、つまり、着色粒をほぼゼロに近づけるために、原因となるカメムシを徹底防除しなければなりません。毎年7月下旬から8月下旬にかけて、全国の水田ではカメムシ防除が恒例になっていて、私は、本末転倒な検査規定だと思っています。

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<加筆>

しかし、着色粒は農薬を使わずとも、精米に混じることはほとんどありません。なぜなら、ほぼ全ての精米工場は色彩選別機を備えており、精米工程で異物と一緒に自動的に除去されるからです。

<加筆終>

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 近年は無人ヘリコプターを使用して防除する面積が増えていますが、無人ヘリは一度に積載できる量が少ないので、濃度を濃くした薬剤を、出穂後1週間から20日程度の間に複数回散布するというのが、防除の基本となっています。

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 さきほどの写真ですが、これはカメムシ防除を呼びかけるポスターを写したもので、因みに、このスタークルというのは、ネオニコチノイド系殺虫剤の一種です。

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 このカメムシ防除による弊害は、ミツバチの大量死という形で、既に全国各地で発生しています。防除によってカメムシ以外の昆虫や鳥類、哺乳類にも影響していると指摘されています。国立環境研究所などによると、近年は赤とんぼも急減しているようです。

 このように、カメムシ防除は生態系に悪影響を与えるだけでなく、無人ヘリで稲穂に直接農薬を散布すれば、薬剤成分が玄米の中にほぼ確実に残留することも分かっています。

海外でネオニコチノイド系殺虫剤の使用禁止の動きが広がっている中、国内産米からネオニコが検出される事態は、生産者として非常に危惧せざるを得ません。

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 こうしたことから、当会は2003年以降、秋田県知事や秋田県議会、秋田県内の市町村議会などに、国に検査規定の見直しを求めるよう働きかけました。

 その結果、知事や県議会、それに秋田県内の44市町村議会から理解が得られ、意見書が政府に送付されています。しかし、こうした意見書は見直しに反映さないまま今日に至っています。

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 農林水産省は2015年、生産者や流通業者、消費者などを集めて情報交換会を開き、また、都道府県やコメの集荷業者、登録検査機関などを対象にしたアンケート調査を行うなど、ようやく国民の意見を聴いています。私たちは見直しに向けて一歩前進したかと思ったのですが、情報交換会の議事録は未だに公開されておらず(概要のみ公表)、またアンケート結果も公表されていないため、関係者や都道府県の中にどのような意見があったのかも明かにされず、見直しの手続はまったく進んでいません。

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 そのため、当会と反農薬東京グループは、独自に各都道府県に問い合わせ、アンケート調査にどう回答したかを調べました。これには22県から回答が寄せられました。

四枚目をご覧ください。これは、アンケートに答えた青森県の回答用紙です。

ご注目頂きたいのは問5です。この設問は、「着色粒の混入限度を1等で0.1%に定めているが、これについてどう考えるか」というものです。青森県は、緩和するべきに○をし、その理由をその他の欄に書いています。

「着色粒(カメムシ)については、色彩選別機により除去されて販売されている。農薬の散布回数低減の観点からも緩和すべき」とし、さらにカッコとして「異物の混入よりも厳しいのは問題」とまで言い切っています。

 その他の各府県から寄せられた回答をまとめたのが五枚目です。問5をご覧ください。回答があった22県のうち、着色粒規定を緩和するべきと回答した県は12県、現状のままが6県、分からない3県、厳しくするべきという県はゼロでした。

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青森以外にも、緩和するべきと回答した岩手県は、その理由を「斑点米カメムシは減収を引き起こすものではない。着色粒の規定をクリアするためだけに農薬が使用されている」と指摘し、また香川県は「流通段階では問題となっていない一方、生産段階では防除コストが負担となっている」などと、着色粒規定との農薬使用の関連を明確に指摘していることが確認できました。

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 国が定めた検査基準に対して県がこうした表現を使っていることに驚きましたが、それだけ、担当者の中にも問題意識がある表れだと思います。

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 岩手県はさらに、アンケート以外の所でも、検査規定と農薬との関連を公言しています。次の六枚目をご覧ください。これは、東北農政局で開かれた「植物防疫・農薬担当者会議」で岩手県が提出した質問書です。下から2番目の左側の項目をご覧ください。ここに「着色粒規定が緩和され、カメムシ防除が減った場合、ミツバチ被害も減少する可能性があるが、見直しの予定や考えがないか」と質問しています。

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 岩手県議会もまた県を後押ししています。県議会は平成16年12月と平成28年3月議会の二度にわたって「農産物検査制度の見直しを求める意見書」を、地方自治法に基づき政府に送付したのです。

 秋田県議会もまた、平成17年3月、同様の意見書を政府に届けているのです。しかしこうした多数の意見書が放置されていると感じます。

 農水省が情報交換会の議事録やアンケート結果を公開しないのは、こうした都道府県の厳しい意見が表にでないようにするためでは?との疑念を持たざるを得ません。

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七枚目をご覧ください。

農水省は、こうした要望を受けて検査規格の変更などを行う場合のマニュアルを定めています。

ここには、①農産物検査規格の要望、②意見交換会の開催、③規格検討会、④パブリックコメント、⑤公示、⑥施行、というように6段階の手順を定めています。しかし、一昨年①②を行って以来、その後の③以降の手順を実施していません。

 そのため当会は、速やかに見直しの手順を進めるよう、この説明会の後、農水省に申し入れる予定です。

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以上です。