米検査のために農薬が多用される問題。現行の農産物検査制度は時代に合わない点が多々あり、こもそのひとつでます。

❏国内におけるミツバチ被害の多くは水田に散布されたカメムシ防除用殺虫剤が原因とされているが、被害を防ぐのはそれほど難しくない。米農家は必要のない経費を掛けてまでカメムシ防除をしたいとは思っていないからである。

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❏防除する理由は、米の出荷の際の検査基準に、色が付いた米粒『着色粒』(カメムシの吸汁によって発生)の割合を1等米で0.1%を限度とする規定があるためである。

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❏現在、ミツバチ被害につながる検査規定を見直すべきだという声が都道府県の病害虫防除担当者の中にも広がりつつある。しかし、そうした声は表に現れないため、米の検査規定について開かれた議論が必要である。

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❏ 資料1:岩手県の病害虫防除担当が一昨年、国に提出した質問書には、

「(中略)着色粒規定が緩和され、カメムシを対象とした防除が減った場合、蜜蜂被害も減少する可能性があると思われるが、着色粒規定等、農産物検査制度の見直しの予定や考え等があるのかお聴きしたい」とある。

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❏ 資料2:農水省が15年に都道府県などに行った「農産物検査に関するアンケート調査」に対し青森県は、

「着色粒規定を緩和すべき。着色粒(カメムシ)については、色彩選別機により除去して販売されているため、農薬の散布回数低減の観点からも検査基準を緩和すべき。着色粒の混入が異物の混入よりも厳しいのは問題」と回答している。

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❏ それ以外で確認が取れている19県のうち、着色粒規定を「緩和すべき」が最多で9県、「現行のまま」7県、「わからない(どちらでもよい)」3県。「厳しくする」は0である。

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❏「緩和すべき」と答えた県では、「流通段階では問題となっていない一方で、生産段階では防除コストが負担となっている」(香川)、「東北地方で被害を引き起こしているのはカスミカメムシ類であるが、減収被害を引き起こすものではない。着色粒の規定をクリアするためだけに農薬が使用されている」(岩手)

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❏ 現在、ほとんどの精米工場には「色彩選別機」という、色が付いた米粒などを自動的に取り除く機械が設置されており、現在、黒い米のクレームは無いという(日本生活協同組合連合会の広報による)。

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❏ 0.1%の着色粒とはどれくらいかというと、玄米1万円当たり10円分である。つまり、玄米60キロ当たり10数円分を超える着色粒が混じらないようにカメムシ防除を行い、そのために約300円/60kgの防除費用を掛けているのが実態である。

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❏2009年、当時の農林水産省食糧部長 奥原正明氏(現農林水産省事務次官)と会談し、国会答弁の誤りについて指摘したところ、奥原部長(当時)は「本当にコスト差がないのであれば検査する意味が無い。もう一度調査する」と約束したが、コストの再調査は未だに行われていない。【新聞記事参照】

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❏以上から、農水省は着色粒の0.1%規定が合理的だと説明できる根拠を持っていないと言える。

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❏ 検査規定が基になってミツバチ被害が起き、関係者が見直しの声を上げている。日本人の主食である米の検査規定をめぐってこうした議論があることを、ぜひ一般の方にも知っていただき、本来、米の検査は何のためにするのか、今一度考える契機にしていただきたい。

農林水産省が平成27年に「農産物検査(お米)に関するアンケート調査」を実施しています。当会はこれについて他の市民グループとともに都道府県に照会し、その結果を公表します。これによると、確認できた22府県が、着色粒規定を「緩和するべき」と回答していました。詳細▷